当人が「触れたくない」と語っているので,傷口に塩を塗ることになるのかもしれません。
ただ,今後同じことが起こるとなれば,またその人に対していろいろ言うことがあるかと思います。
それを少しでも防ぐためという意味でも,私なりの意見をここで書くことにします。
誰かを責めるというのではなく,改善策として語るようにします。
先日,FA(フリーエージェント)宣言を行使した山川穂高を,福岡ソフトバンクホークスが獲得を表明しました。
移籍元の埼玉西武ライオンズに対して,ホークスはプロテクト選手をリストアップして提出しました。
それを見た上で,西武は甲斐野央を獲得しました。
西武は人的補償を選び,山川に代わる選手を獲得できたということになるのです。
これだけならば通常のFA宣言と人的補償の流れを説明したのみとなります。
ただ,西武が甲斐野を獲得する際に,あることが起こって騒ぎになったのです。
私の考えを述べる前に,あることについて詳しく説明します。
FA宣言を行使した選手は,前所属チーム内の年俸でランク付けさせられます。
年俸1から3位まではAランク,4から10位まではBランク,11位以下はCランクとなります。
なお,このランキングで外国人選手は除外されます。
そして,AとBランクの選手を他球団が獲得すると,移籍元球団は補償を受けることができます。
お金と移籍先から選手を1人もらえる人的補償。
選手はもらわずにお金をたくさんもらえる金銭補償というのがあります。
AorBランクの選手を獲得した移籍先球団は,移籍元選手に対して「プロテクトリスト」を提出しなければなりません。
今回の場合,移籍先はホークス,移籍元は西武ということになります。
山川はAランクになるので,ホークスは西武にプロテクトリストを提出することになります。
「プロテクトリスト」とは,「人的補償を選ぶのなら,ここに載せた選手以外を獲っていいですよ」と移籍元に示すものです。
移籍元は,移籍先から以下の選手以外から1人獲得できます
・プロテクトリストに載った28名の選手
・外国籍選手(FA獲得で外国人枠から外れた選手を含む)
・育成枠の選手
・直近のドラフトで獲得した新人選手
今回のホークスで言うのなら,プロテクトされた28人以外に,オスナなど外国人選手,育成枠にいる選手,前田悠伍など23年ドラフトで獲得した選手。
これら以外の中から,西武が誰を獲得してもいいということになるのです。
もしも欲しい選手が誰もいなければ,金銭補償を選ぶということになります。
ここで問題になったのは,西武が甲斐野獲得と発表する前です。
報道で西武が和田毅を獲得する意向と出たのです。
和田は2002年ドラフトでホークスに入団し,今年で22年目を迎える大ベテランです。
MLB以外はずっとホークスに所属し,「最後のダイエー戦士」となるくらいの古参です。
将来はコーチや監督という期待も,ファンにはあるかと思います。
そのような大ベテランが移籍というだけに,ファンが大騒ぎしたのです。
「和田がホークスじゃなくなるなんて…」,「球団は和田をプロテクトしなかったのか」
そもそも和田は昨季8勝を挙げて,左腕で勝ち頭となっていました。
今季から監督を務める小久保裕紀も,開幕投手候補と言っていました。
そのような選手を,ホークスフロントは西武に「獲得してもいいよ」と示したのです。
西武が,今年で43歳になる和田を獲得する意図がどこにあると考えられるのでしょうか?
恐らくですけど,若い左腕投手の手本が欲しかったという考えではないかと思います。
今季で3年目の隅田知一郎や佐藤隼輔が,昨季ブレイクしました。
さらなる飛躍のために,近くに手本となるベテラン左腕として白羽の矢を立てたのではないでしょうか?
西武のベテラン投手といえば増田達至くらいで,他にはベテランという存在がいません。
あと何年プレーするか分からなくとも,そうした意味で大ベテランを指名しようとしたのではないかと思うのです。
ところがこの報道によって大騒ぎになりました。
その後西武は,リリーフ投手の甲斐野を人的補償として指名したのです。
確固たるセットアッパーとクローザーが昨季いなかったので,その穴埋めを狙ったのだと思います。
こうして,和田の移籍は幻に終わったということなのです。
この件は,報道によって人的補償を変えたと捉えられても仕方ないです。
最終的には西武が「忖度」したことによって,騒ぎが収まった形になったのです。
山川に対して厳しい声が残っているだけに,和田の移籍に対してファンはより敏感になったのだと思います。
それでは,この騒動の何が問題と考えられるのでしょうか?
1つずつ見てみます。
①ホークスが和田をプロテクトしなかった
まずホークスファンが騒いだところで一番大きいのは,ホークスフロントが「和田を獲ってもいいよ」と示したということですね。この点でホークスファンは,未だにフロントに不信感を持っているのではないでしょうか?いや,選手からも不信感が出ているのかもしれません。
プロテクトリストに載せる選手は,主力選手か期待の高い若い選手が中心になることがほとんどだと思います。今回のホークスなら,野手で近藤健介,柳田悠岐,甲斐拓也など,投手なら石川柊太,有原航平,松本裕樹などがプロテクトされていたと思います。こうした選手を28人のプロテクトリストに載せて,「この中以外から獲得してもいいよ」と西武に示すのです。
そこに,昨季8勝と左腕で勝ち頭となり,将来の指導者候補と言われていた和田を入れてなかったのです。今年で43歳という高齢とはいえ,昨季もチームに貢献した選手をプロテクトしてなかったのです。私はこの報道が出た時,「他には言えない故障を抱えているのか?」とさえ思ったのです。
こうしてホークスフロントに対して,ファンからは「ベテランや貢献者に冷たすぎる」という声があがったのです。選手からも「和田さんを何だと思っているの?」と思っている人が出ている可能性もあります。このような声が出るのは,過去を覚えている方もいるからではないかと私は思うのです。
その事例は2つあり,1つは福岡ダイエーホークス時代の小久保裕紀です。小久保はダイエー時代に本塁打王に輝くなど主力として活躍したものの,2003年はOP戦の大けがで1試合も出場できませんでした。それでも「来季こそは」と,本人もファンも期待していたと思います。
ところが小久保とフロントで確執があり,シーズンオフに小久保は読売ジャイアンツへ無償トレードされたのです。チームリーダー的な存在であった小久保を「ただで」放出したフロントに,ファンも選手も不信感を持ちました。その年に優勝・日本一になったものの,優勝旅行をボイコットするくらいになったのです。
小久保は2006年オフにFA宣言を行使し,ソフトバンクになっていたホークスに復帰しました。この時はフロントも変わっており,わだかまりなく復帰できたと思います。ファンも喜んだと思いますけど,小久保放出当時は相当騒いでいたと記憶しています。
もう1つの例は杉内俊哉です。杉内はホークスで長年左腕エースとして活躍を続けていました。福岡出身で,高校も社会人も九州だけにホークス愛も強かったと思います。ファンから将来の指導者候補とまで見られていたのではないでしょうか?
それが当時のフロントと確執が生まれたのです。フロントの評価法に疑問視したことや,フロントの人から「FAしても獲得する球団はない」とまで言われたとのことです。杉内もホークス愛で保つことはできず,2011年オフにFAして巨人に移籍したのです。
生粋の九州出身ということもあり,これもファンにとって大きなショックだったと記憶しています。かつ,フロントに対する不信感も芽生えたと思います。杉内が移籍して,12年に巨人は優勝・日本一となり,ホークスは優勝を逃したのです。フロントに対する疑念は,なおさら募ったと思います。
小久保と違い,杉内は24年現在までホークスに復帰していません。小久保の確執はダイエー時代で,復帰した時とは親会社が違っていました。それに対して杉内は,ソフトバンク時代に確執が生まれたのです。復帰するどうかは,フロントの姿勢次第ですね。
というように,主力選手の移籍によるフロントへの不信感が芽生えたという過去,これがホークスにあるのです。それを記憶しているファンにとっては,今回の和田の件に対して「何も変わってないではないか」と思う人もいるのかもしれません。
以上のように,ホークスファンにとって大騒ぎの一番の要因は,和田を移籍からプロテクトしなかったことです。「まだ”生え抜き”に冷たいの?」と,過去を知るファンから不信感は大きく募ったのではないでしょうか?それが選手内に出ていれば,不協和音の一因にもなりかねません。
ただし,これについてホークスフロントはルール違反をしたわけではありません。将来有望な選手を中心にプロテクトすれば,あと何年プレーするか分からない和田を外すのは無理もないことです。仮に和田が本当に移籍したとしても,徹底的に若い選手の芽を出せば,その声は霞むことになると思います。この世界,結果で強化されるのはフロントも同じですからね。
②そもそも,この情報はどのようにリークしたのか?
私が今回の件で一番気になったのは,和田が移籍かという情報がどう漏れたのかなのです。もしもリークされていなければ,西武はそのまま和田を獲得できていたのかもしれません。まあ,それでも大騒ぎになっていたとは思いますけどね。
プロテクトリストは,移籍先球団から移籍元球団のフロントに渡されます。これはフロント内のことであるので,誰がプロテクトされたのか,誰がプロテクトから漏れたのかは,お互いのフロントしか知らないはずです。実際,プロテクトリストは公表されず,選手自身も知らないはずです。
それが今回,何らかの形で「西武が和田を指名する方針」と,公式発表する前に情報が漏れたのです。どこが最初に報道したのかは記憶にないですけど,その記者や報道機関はどのように情報を手に入れたのでしょうか?
これに関しては,フロントが情報を漏らしたのか,うっかりなどで情報が漏れたのかによって見方が変わります。報道機関に対しては,フロントと結託してない限り責任はあるのかなと思うのです。
まず何者かが情報を漏らしたとなれば,それはホークスフロントである可能性が高いです。目的はやはり,和田獲得を西武に撤回してもらうためとしか思えません。西武が漏らしたとなれば,百害あって一利なしの行為ですからね。
これが本当となれば,「何のためのプロテクトリストで,何のためのFAと人的補償なのか」という問題になります。きちんと「28人」とルールで定めているのに,この手を使えばそれ以上プロテクトしたということになります。これを防ぐとなれば,ルールを変えるしかないと思うのです。
一方で,情報が漏れたということになれば,フロントは選手を守ってないということになります。何故プロテクトリストを公表しないかといえば,プロテクトされなかった選手を傷つけないためであるはずです。「俺,球団から必要とされてなかったのか」という感情が芽生えないように,公表しないという形を取っていたのではないでしょうか?
それが今回情報がリークしたことで,誰が幸せになったのでしょうか?和田は移籍にはならなかったものの,「この件に触れたくない」と語るようにショックを与えることになりました。ファンや選手からも不信感が芽生えたということになりました。
このような事態を防ぐための秘密なのに,それが何かしらの原因で起こってしまったのです。選手を守ることは,フロントにとって非常に重要なことのはずです。その義務を怠ったとなれば,選手は今後どっしり構えてプレーを続けられるのでしょうか?この方式で漏れがあるとなれば,やはり見直す必要があるということになります。
③過去の出来事(疑惑)から,このような事例が起こり得るにも関わらず,何も対処されてなかった
今回の和田の件について,私は「これ過去の疑惑から起こり得ると予測できなかったのか?」と思いました。あくまでもその時は疑惑で済んだものの,今回は実際に起こることになりました。NPBがルールを見直さなかったことで,今回の騒動になったと言われても仕方ないのです。
ここから話すことは,あくまでも信憑性が疑わしい一部の報道で出たことです。当該者が認めたわけではなく,あくまでも疑惑のままです。そのつもりで,この事例を読んで頂けたらと思います。
2017年オフ,北海道日本ハムファイターズに所属していた大野奨太がFA宣言を行使しました。そして,中日ドラゴンズに移籍となりました。大野はBランクなので,中日は日ハムにプロテクトリストを出しました。日ハムは金銭補償を選び,選手獲得をしなかったのです。
ところがこの後,一部で疑惑の報道が出たのです。日ハムは岩瀬仁紀を人的補償で獲得しようとしたものの,岩瀬が「移籍するなら引退する」と拒否したとのことです。これで日ハムは金銭補償を選んだという情報が出たのです。
もう一度言いますけど,本当にこのようなことがあったのかは定かではありません。岩瀬も中日フロントも日ハムフロントも何も語ってないので,真相は分かりません。ただ,そう思われても仕方ない根拠がいくつかあるのも事実です。
まずルールについて説明します。人的補償で指名された選手は,移籍することを拒否することができません。もしもするのなら,その選手は資格停止選手となり,強制的に「引退」となります。この場合は,金銭補償に変わることになるのです。
このルールに合わせると,もしも日ハムが岩瀬を人的補償として指名したとします。岩瀬は日ハムに入団するか,その時点で引退するかを選ぶしかありません。結局,日ハムはそのまま金銭補償を選び,人的補償を指名しない形にしたのです。
この報道にどのような根拠があるのでしょうか?まずプロテクトリストが届いたとき,日ハムフロントは「ファイターズとしてインパクトあるリスト」と語りました。このように語ることから,人的補償を誰か指名する可能性が高いと考えられます。
ところが年が明けた18年1月,日ハムは金銭補償を選ぶと発表したのです。発表直前にニック・マルティネスを獲得し,支配下登録が70人いっぱいになったからとも言われています。岩瀬が拒否したからマルティネスを獲得したのか,マルティネスを獲得できたから変えたのか…どちらに捉えることもできます。
ただ,この報道に対して,岩瀬も中日フロントも日ハムフロントも何も語ってないからこそ,疑惑の信憑性があると思うのです。違うのなら「そのような報道が出ていますけど,きちんと岩瀬をプロテクトしていますよ」と語ればいいのです。仮に本当にプロテクトから漏れたとしても,公開はされないので偽っても誰も傷つけることはないです。岩瀬本人も「全く何も知らないです」と言えばいいだけのことです。
ところが何も語らないからこそ,疑惑を事実と思われても仕方ないのです。そして今回の和田の件が出た時に,引き合いに出されることになったのです。これはもう,過去の後処理が悪かったからとしか言えません。
結局情報が漏れたことで,西武が和田を獲得することに対して「なんてことを」という声が出たのです。西武は「忖度」したため,甲斐野に方針転換をした。そう思われても仕方ない事態になったのです。和田が「引退」をちらつかせて拒否したと思われても,どう反論できるのでしょうか?
このように,何かしらの「忖度」によって28人以上のプロテクトになる可能性は十分起こり得るのです。また,一度育成選手に下げて,プロテクトしなくてもいいという「裏技」もあり得ます。このようなことが認められるとなれば,もはやルールが有名無実になってしまうのです。
今回の騒動はフロントに責任があるのは間違いないです。ただし,このような事態を想定できたにもかかわらず,ルール改正など何をしなかったNPBにも問題はあります。過去の一件(疑惑)から何も学んでないことを,今回の騒動で証明したように見えるのです。
以上が,今回の件で私が問題と思う点です。
誰が悪いとかはありますけど,何かを見直さないといけないのは間違いないと思います。
少なくとも,今回の騒動で誰が幸せになったのでしょうか?
そう思えば,ルール改正など着手できるはずではないでしょうか?
長くなったので,一度ここで切らせていただきます。
私なりの改正案や考えを,次回出したいと思います。
それでは,またよろしくお願い致します。
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